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79:「権利」って

「権利」という言葉を出すと、きまって相手は、冷めた視線を向けてくる。

どうやら、僕たちは「権利」という語感自体に、苦手意識が植えつけられているようで、そこで「権利」という言葉の起源を調べてみた。

そもそも、封建制度の日本には「権利」という概念すらなく、この言葉が生まれたのは、明治維新後の文明開化による。
この時代、西洋の物や考え方を取り入れては、知識人たちが、次々と外国語に漢字をあて、新しい言葉を造り出していった。

社会、哲学、自由、人格、芸術、銀行、絶対、学校…。日常、僕たちが使う言葉の多くは、この頃に造られた。

この知識人の中で、最も有名な人物は、福沢諭吉。
その福沢諭吉でも、翻訳不可能という言葉があった。
英語の「right (ライト)」。
この言葉の本来の意味は、誰もが人として生きるため平等に有しているもの。

西洋でのそれは、民主主義の根幹を成し、革命や戦争の根源にもなっていた。
福沢諭吉は、豊富な渡航経験から、この言葉の持つ意味の深さを分かっていた。

ところが、西周(にしあまね)という当時の文部大臣が「権利」と訳をつけた。
出典は、仏教用語にあり、「権力をもって力ずくで得る利益」との意味を持つ。

もしかして、この「権利」と訳されたことで、僕たちは、当たり前のことでも、何だか悪いことしているかのようなイメージを抱いてしまうのかもしれない。

とすれば、考えてみたい。
今を生きる僕たちが有する「right」。何と訳したらいいのだろうか。