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76:勝手な印象

先月、誕生日を迎えた。53歳。もういい加減、中高年の部類に入ってしまった。
「毛は白く、目は遠く、歯は噛めなくて、胃は重く」
老化は、身体の一文字から来るなんていうのは、僕が決めた勝手な法則。

それでも、今、勤めている老人ホームでは、「若いねぇ」と羨ましがられる。
当たり前のことだろうけど、ここに異動する前は、保育士をしていて、この時は「ジーちゃん先生」と呼ばれていたから、この差を埋めるのには苦労した。

不思議な現象がある。
お年寄りにしても、子どもにしても、ずっと接していると、僕と同い年かのように見えてくる。
だけど、ホームのお年寄りが外の道を歩いていると、普通の老人に見え、園の子どもが外を歩いていると、普通の幼児に見えてくる。

このことを良さんに話したところ「お前の一方的な印象だ」と言われた。
良さんは、重度の障害があり、長く障害者施設にいた。
だからか、施設職員の僕をズバッと斬ってくる。
「大切なのは、相手が、お前をどう思っているかということだ」とも言われた。
するどい答えに、僕は、みごとに斬られてしまった。

確かに自分の尺度だけで相手の印象を描いていた。仕事やボランティアともなれば、世話する側の思いに偏ってしまうのだろうか。

そういえば、「障害者って、僕よりも年上であっても、みんなかわいい人ばかり」と話した時、良さん、すごく怒って、こう言ってきた。
「お前が障害者に対して思い描いている『かわいい』の後に『そう』をつけてみろ」
「かわいそう」