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63:権利の義務

「恥ずかしい話、大人になるまで義務教育の義務は、子どもにあると思ってた」
こう、良さんに打ち明けたら、「俺は、学校に行ってない」と意外な答えが返ってきた。

良さんとの長い付き合いの中、そんな風には見えず信じられなかった。
「養護学校が義務化になるまで就学免除と言ってな、俺みたいな重い障害者は、学校にも行けなかったんだ。今でも、そういう子どもたちがたくさんいる」
初めて聞いた話しだった。だけど、良さんは、難しいことでも、よく知っている。
ますます、不思議な人だ。

「子どもの頃、入院ばかりしてたんだが、待合室のエッチな週刊誌が好きでな。こいつで字を覚えたんだ」
嘘か本当かは知らないけれど、これも良さんらしい。
「では、質問。国民の三大義務って何だ?」 急に良さんから聞かれた。
でも、簡単に答えられた。
「納税、勤労、教育さ」
「じゃあ、三大権利は?」
「えっ、そんなのあんの?」
今まで学校で習ってきた授業。どの記憶をたどっても思い出せなかった。

「生存権、参政権、教育を受ける権利を言うんだ」
一般正解率は、何%か?
特に、義務教育を教わっても、教育を受ける権利を教わった感は乏しい。
だから、僕は、従順に義務教育を受けてきた。
群れる子羊のように・・・。

「教えることが義務ならば、学ぶことが権利。自ら学ばなければ、権利より義務が大事と刷り込まれるんだ。」
またもや良さんの博識に感心した。
「そんな、いろんな知識は、どこで覚えたの?」
「エッチな週刊誌からさ」