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53:正義の味方

 あるボランティアの会合で自己紹介をした。
 「私の趣味は、海、山、歌、酒、ボランティア」
 さらに注目を向けようと「小魚釣って、小山を登って、ゴスペル叫んで、美酒に飲まれて、ボランティアは・・・あれっ?」
 聞いていた人たちは、この戸惑いを笑ってくれたが、ボランティアについてのエピソードが出なかったのはジョークではなかった。
 同時に、自分の中のボランティアは、やっぱり趣味ではないと確信した。

 僕がボランティアを知ったのは30年前、ジュンという同級生と出会ってからだ。
 ジュンは、重い障害がありながらも、大学に入学した後、アパートを借り一人幕らしを始めた。
 ジュンと同じクラスになった僕らは、彼のボランティアを募っていった。
 車いすでの通学、トイレ、入浴、泊まりの介助は男子、食事の用意は女子と、たくさんの仲間が集まった。

 みんなは、ジュンのアパートに入り浸り、毎日楽しくにぎやかだった。
 しかし、それは半年も経たず、次第にみんなの足は遠のいていった。
 違うサークル活動やアルバイトに散っていった。
 また、ここで出会い、恋が芽生えた二人は、ほとんど来ることもなくなった。

 ジュンがぽつりと言った。
 「趣味感覚の人じゃボランティアはつとまらない」

 その昔、ボランティアは特別な存在で、僕らはおこがましくて名乗れなかった。
 今や趣味の域。空き缶一つ拾ってもボランティアだ。

 「正義の味方!ボランティア」時代をさかのぼってもいいのかもしれない。