一人暮らしの学生時代 は、お金もなくて、みじめな 食生活を送っていた。
こんな時、唯一、おなかを 満たしてくれていたのは、ジ ュンのところだった。ジュンは、 大学の同級生。重度の障害 があった。
ジュンも一人暮らしをして いて、僕は、およそ週に一度、彼のアパートに行き、食事、 排泄、着脱などの介助にあ たっていた。嬉しいことに、ここでは、同級生の女子たち が作ってくれる手料理が食 べられた。だけど、ジュンは、 どんなに旨そうな料理で も、モソモソ静かに食べてい た。美味しいのかどうかも わからない。僕の食事介助 の仕方が、悪いのかとも考 えた。
すると、普段思いもしな いことに気がついた。僕ら は、何気なく自分の手で、箸で、スプーンで食べていて、こ れらが食べ物に触れた瞬間 から、味を感じている。
で も、ジュンは、口に入れるま でわからない。手元から口 元までの一瞬にひらめくワク ワク感。僕とジュンの間にあ る差を縮めることはできな いか。
考えた末、「食事介助」 と言うのをやめた。そして、 今までジュンの食事介助を 粛々と済ました後に食べて いたけど、一緒に同じ物を食 べることにした。
これは、空腹に耐え介助 していた僕にも都合がよく て、「旨い」「甘い」「辛い」と、 二人の食事はにぎやかで、 腹いっぱい食べた。少食と思 っていたのにジュンの食欲に も驚いた。足らなくなって、 翌日の食材まで食べてしま って、これは、さすがに女子 たちから怒られた。
便秘で悩んでいたジュンが 僕にくれた最高の賛辞は。
「お前が泊まった日の朝 は、ウンコがでかい」