あるボランティアの会合で自己紹介をした。
「私の趣味は、海、山、歌、酒、ボランティア」
さらに注目を向けようと「小魚釣って、小山を登って、ゴスペル叫んで、美酒に飲まれて、ボランティアは・・・あれっ?」
聞いていた人たちは、この戸惑いを笑ってくれたが、ボランティアについてのエピソードが出なかったのはジョークではなかった。
同時に、自分の中のボランティアは、やっぱり趣味ではないと確信した。
僕がボランティアを知ったのは30年前、ジュンという同級生と出会ってからだ。
ジュンは、重い障害がありながらも、大学に入学した後、アパートを借り一人幕らしを始めた。
ジュンと同じクラスになった僕らは、彼のボランティアを募っていった。
車いすでの通学、トイレ、入浴、泊まりの介助は男子、食事の用意は女子と、たくさんの仲間が集まった。
みんなは、ジュンのアパートに入り浸り、毎日楽しくにぎやかだった。
しかし、それは半年も経たず、次第にみんなの足は遠のいていった。
違うサークル活動やアルバイトに散っていった。
また、ここで出会い、恋が芽生えた二人は、ほとんど来ることもなくなった。
ジュンがぽつりと言った。
「趣味感覚の人じゃボランティアはつとまらない」
その昔、ボランティアは特別な存在で、僕らはおこがましくて名乗れなかった。
今や趣味の域。空き缶一つ拾ってもボランティアだ。
「正義の味方!ボランティア」時代をさかのぼってもいいのかもしれない。