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85:痛風の旅Ⅱ

前号の続きで痛風の旅。

 その出で立ちは、背広にリ ュック、左足は革靴、右足はサ ンダル。出張とはいえ、右足親指が腫れていて靴が入らないから仕方ない。右足は、地面に触れただけで「ギャー」と痛むので左足でケンケンしながら小倉駅へ、そして、博多行きの電車に乗った。

 車内は、朝のラッシュ時だけに空席はなく、乗車するや、人をかき分け優先席に座ると「なんや、こいつは」の冷たい視線を浴びた。たまらず目を閉じ、ずっと寝たふりをしていた。

 博多駅に到着。電車を降り、ケンケンでエレベーターの方に向かおうとしたけど、ホームには通勤客の波。
「あれぇ〜」人に押され階段の方へ流されてしまった。

手すりを握り締め左足で一段ずつ階段を降りていると「宮崎さん?」と聞き覚えのある女性の声がした。
「しまった。変装してくるべきだった」こんな所で知り合いに会おうとは・・・。
「足はどうかしました?」
「いや、くじいてしまって」

 これが「痛風」と答えると、誰もが「ぜいたく病」などと馬鹿にするから、いつも「捻挫」で通している。
「痛風に悪いのが、鶏のササミに鯵の開きに干しシイタケなんだよ」と言っても、みんな信じてくれない。
「痛風患者への偏見蔑視だ」と心の中だけで叫んでいる。

 汗ぐっしょりでタクシー乗り場まで行き乗車した。
少し走ると運転手さんが、「私もこの間まで痛風で足を引きずっていましてね」とにこやかに話かけてきた。

それから二人、痛風談義 に花が咲いた。
僕が痛風だと見破られたのは、運転手さんも僕と同じ出で立ちだったそうだ。